FUTURES

ICTで描く、未来

ICTで描く、
ジェイアール東海コンサルタンツの未来

少子高齢化、気候変動、コロナウィルスとさまざまな変化の波を受けて、建築土木業界も大きく姿かたちを
変えようとしています。そうした中、ジェイアール東海コンサルタンツで胎動するICTプロジェクトの一例をご紹介します。

INTERVIEW MEMBER

BY 3D MODELING

3Dモデルから設計図面まで
一気通貫のビジネスフローを実践していきたい。

土木事業部 土木設計第一部 第二
ICT企画室
古井 良典

3Dモデルで必要な材料の量まで算出。

たとえば橋りょうを作りたい、駅のプラットフォームを改修したいという要望をJR東海から受けて、概略設計をその工法含めて提案するのが今の業務です。その後詳細設計で細部を詰めていくのですが、この工程にCIM(建設情報の3Dデータモデル化。モデル化することで施工から維持管理までのデータが共有できる)を取り入れ、土木構造物の設計から施工、その後のメンテナンスまでデータ上で一元管理していくことが当面の目標です。3Dモデルを使えば、たとえば土木構造物の盛り土に必要な量が空間データ上ですぐに算出でき、これまでの面倒な計算も不要になります。

ダンパーブレースとの合成

一元化に向けた
ステップアップが目標。

既存の建設は点群データ(構造物や地形を3Dレーザースキャナーなどを使って”点の集まり”としてデータ化。非接触で高い場所などの形状をデータ化できる)として収集し、これから作るものは3Dモデルにすることで効率的に情報共有できるはずなのですが、一方で課題もいろいろあります。たとえば業界内でのデータベース化が遅れていたり、会社間で使用するアプリケーションがまちまちだったり、あるいは3D化にコスト制約があったり…。ただこのCIMの導入や点群データ化、3D化にはメリットが山ほど感じているので、なんとか一元化していくつもりです。点群データと3Dデータを組み合わせてどんどん共有データを増やしていきたいです。自分自身でも時間があれば平面の図面に加えて3Dモデルでの提案も行っています。そうすると平面データ以上に提案先の理解も深まります。課題はまだまだありますが、少しずつ解決して3Dモデルから設計図面、そして施工までワンストップで管理できる流れをじっくりと標準化していくのが当面の目標です。

BY POINT CLOUD DATA

点群データ活用で設備点検作業の省人化を目指す。

設備事業部 名古屋設備部
総合企画部 ICT企画室
川野裕基

名古屋駅中央コンコースの点群データ

従来の目視点検から
リモート点検へ。

駅舎とその関連建築物の維持管理を担当しています。法令により定期的な設備の点検が必要なのですが、試行的に地上レーザースキャナーを導入した際、上司の「やってみる?」という勧めもあって担当としてその活用方法を試行しています。レーザーで対象物の空間位置情報を計測し、点群データ化することで建物の変位調査や3Dモデル化に使っていこうとするものですが、当初は採集した膨大なデータをどうやって維持管理に結びつけようかと悩みました。最近は建屋の傾斜角測定などで実用化に向けたテストを重ねているところです。この点群データとドローンや360度カメラを併用することで、たとえば建屋内の目視では確認しずらい天井裏の亀裂や変位などが簡単に点検できるようになります。安全を第一に実地での試行を十分に重ねつつ、デジタル化を進めていきます。

2,700棟の維持管理を
ICTで効率化することが目標。

JR東海の在来線名古屋エリアの管轄は8つの県にまたがり、駅数は300超、建築物は約2,700。このすべてを定期点検で維持管理するのが私たちの仕事です。が、遠い駅だと片道4時間かかる場合もあり、たとえば簡単な計測作業でもそれだけの時間を要してしまうのが現状です。点群データを取得しておけば、次に測った際、過去のデータと比べれば経年変化が数値化できます。今は従来の作業に重ねてこうしたデジタル化を行っていますが、将来的に作業はデジタルに移行していくはず。労働人口が減少する中、どうすれば現場に割く人的リソースを低減できるかという課題を前に、点群データやドローン調査を活用することで建築物の維持管理を高い品質によりコンサルティングしていきたい、と考えています。

BIM

“その先”のBIM活用を
ボトムアップで拓いていきたい

建築事業部 環境デザイン部
岩崎 大悟

建築設計におけるBIM活用例

空間データが瞬時に共有できるメリット

たとえば学校なら通う人は学生や先生に限られている、オフィスビルは働く人と、その施設を利用する人は限られます。ところが「駅」はだれでもみんなが使うという点で公共性が高い、だから駅の建築に関わりたかったんです。入社して1年めは駅とその周辺の設計を担当、2-3年めはBIM(※建築情報の3Dデータモデル化)に関わり、4年めの今年はBIM推進室と設計室を兼務、意匠を中心に建築設計を行っています。3DCADとBIMの違いについてよく尋ねられるのですが、CADが2D図面から立体図面を起こすツールであるのに対し、BIMデータは、最初から3Dモデルを作成し、そこにはたとえば壁面を構成する素材の材質や仕様、納期などさまざまな管理情報がヒモづければ、積算や工期算出にすぐ活用できます。電気や水道との干渉チェックも簡単にできるし、なにより空間データが一瞬で共有できる…意思疎通やシミュレーションまでこのBIMを使うことでいっきに効率化ができます。

ICTと親和性の高い世代の役割

建築設計施工に当初からこのBIMを使うことでワークフローは一変するはずなのですが、実際BIM化するための課題もたくさんあります。たとえば先日関わったある設計業務では、最初はCADで図面を進めて、途中からBIMに移行させるというパターンもいまだに多いのが現状です。そもそもBIMはDX(デジタルトランスフォーメーション)のひとつで、デジタル化された情報ごと可視化していく、そして設計後もデジタルデータを活用していけるのがポテンシャルだと思うのですが、実際この先どう活用していこうかという点ではまだまだ手探りの状態です。その点、デジタルやITと親和性の高い私たちの世代が率先して進めていくことが大切で、組織の中でもボトムアップでこのBIMをはじめとするDXを浸透させていきたいですね。そのためにプログラミングの勉強もしたりしてますが、ICTと設計の両方わかる人がこの業界には意外と少ない気がします。その点でBIMやDX技術を通じて自分自身の世界も広げていきたいし、そうした知見の広がりが本来の設計業務にも活かせると思うんです。

BY DIGITAL TWINS

保守管理の効率化を目指し、
デジタルツインで未来を引き寄せる。

調査事業部 情報技術部 総合企画部 ICT企画室
岩城詞也

工事・管理の共通
プラットフォーム化。

従来の保守管理業務はどうしても管轄がタテワリ状態で意思疎通が煩雑になりがちでした。たとえば沿線で工事を進めるにはまず複数の管轄部署に連絡し、許可を得てから実作業に入る必要があり、そこに時間も手間もかかる…言い換えれば共通のプラットフォームがない状態だったんですね。そこで業務改革の一環としてデジタルツイン(現実世界で計測・収集したデータをちょうどツイン=双子のようにコンピューター上で再現)の開発に着手、手始めにJR東海グループの象徴でもある名古屋駅のデジタルツイン化に着手しました。3Dレーザースキャナーやデジタル一眼レフカメラで取得したデータを元にバーチャル上で名古屋駅全体をチームで作っていきます。これが完成すれば施設のメンテナンスがデータ上で一元的に管理でき、たとえば施工現場への立ち合いもPC上ででき、改修などのシミュレーションを立案・共有することも容易で、各管轄でのコンセンサスもよりスピーディーに取れるなど、無数のメリットが生まれるはずです。

航空レーザーの点群から生成したメッシュモデル

鉄道沿線航空写真

さらに名古屋駅という”資産”を
バーチャル世界で活用。

もう一点、将来的には名古屋駅のデジタルツインをたとえばメタバースのような3次元仮想空間への2次利用も計画しています。交通はもとより駅地下などの飲食や商業施設、イベントやインフォメーション機能など、こうした複合機能を持つ総合駅が仮想空間として公開されれば、たとえばバーチャル駅のネットショップで買った商品を実際の駅で受け取るなど、仮想と現実の相互送客が可能になります。デジタルツインとして描出された施設をプラットフォームに、JR東海グループ内のコンシューマ向けサービスを展開する会社とも協業していく予定です。より快適で安全な駅と鉄道づくりのためにこうしたデジタル化技術が省人化はもとより、さまざまな角度から活用していただくことも私たちの役目なんです。

名古屋駅デジタルツイン

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